福引物語 第二段
昼間が温かくても、北海道の冬の夕方はとても冷え込みます。 日中が暖かいほど、夜は冷え込みも厳しくなります。 防寒対策としてどんなに着込んでも、防げるような寒さではありません。 そんな寒さの中に立ちながら、私は福引きで自分の順番が来るのを待っていました。 時間にすると、きっと数分のこと。でも私には、何時間にも感じられました。 やっと私の番になったかと思えば、おばさんの割り込み。 幼さゆえに「私も並んでいます」とは言えず、泣きそうな気持ちでさらに数分を過ごしました。 待ちに待った自分の番になり、数枚の券を差し出します。 それを受け取ったのは、学生と思われるお兄さん。 冬休みの間のバイトとして、福引の係りになったのでしょう。 券を受け取りながら「今日は寒いね」と話かけてくれました。 それからも一言二言交わしながら、私はガラガラと回します。 寒い思いをしながら待った甲斐もなく、全てハズレ。 それでも空クジ無しなので、クジを引いた分のポケットティッシュをもらえます。 お兄さんが渡してくれたティッシュの数は、私が回した回数より明らかに多い。 私は正直に「多いみたいだよ」と言って、返そうとしました。 するとお兄さんは声をひそめ「いいや。寒かったでしょ。持って行きな」と言ってくれました。 私はお礼を言って素直に受け取りました。 一度はそのまま立ち去ろうとしましたが、立ち止まって振り返り「バイバイ」と手を振りました。 お兄さんは恥ずかしそうに片手を上げ、「また」とだけ言いました。 割り込みをしたおばさんに注意する勇気を、まだ学生のお兄さんにはなかったのでしょう。 たくさんくれたポケットティッシュは、寒い中で待ち続けた私への労い。 そして、割り込みをやめさせられなかったことへの、申し訳なさも込められていたのかもしれません。