福引物語 第一段
まだ小学生低学年くらいの冬だったと思います。
年末に行われる福引は、私の大きな楽しみでした。
買い物した金額によって、福引券をもらうことができます。
親が福引券をもらったら、回すのは私の役でした。
その日も年末年始の買い物を済ませ、帰ってきたお母さん。
両手に持った袋は、はち切れんばかり。
大量の荷物をおろしたお母さんを見る私が待つものは、ただ一つ。
こんなに買ったのだからあるはずだと、ワクワクです。
おもむろにお財布を開いたお母さん。
そこから出されるのは数枚の紙。
それはもちろんお札ではなく、福引券です。
福引券を受け取った私は、早速福引に出かけました。
暗くなり始めた時間帯。
だんだん外も冷え込んでいました。
福引の前には4、5人のおば様方の姿。
私も一番後ろに並びます。
回すのが1人1回なら、すぐに順番はやってきます。
でもみんな何枚も券を持っていて、1回で終わることはほとんどありません。
冷たく吹く風が頬に刺さります。
手袋の下で指がかじかみます。
寒さをこらえながらの待ち時間は、実際よりも長く感じました。
そしてようやく、あと1人で私の番。
そこに、券を持った1人のおばさんがやってきました。
今福引を回すおばさんとは知り合いなのか、近づいて親しげに話しかけます。
私は思わず一歩後ろに下がりました。
今回しているおばさんが終わると私の番…のはずが、
たった今来たおばさんが自分の券を差し出します。
それもまた一段と枚数が多い。
そして当たり前のように、自分がさっさと回し始めるのです。
幼い私は何も言えず、さらに数分待つことに…。
さっきよりも冷たく感じる風、寒さで感覚を失いそうな指。
今度こそ自分の番になり、そっと券を差し出します。
券を受け取る男の人は、見るからに学生。
割り込みをするおばさんを咎めるには、まだ若すぎました。